沢木耕太郎先生の講演を聞いて

2011/10/1716:00

 9月25日、中日交流イベント「上海ジャパンウイーク2011」の一環として催された沢木耕太郎先生の講演会に足を運んだ。
 会場となったのは上海外国語大学キャンパス奥に位置する「日本文化経済学院」だった。正門から歩いて10分ほど。これまで 沢木先生の著作を読んだことのなかった私は、正門から講堂にたどり着くまで、一体どんな方なのだろう、またどんな話しを聞けるのだろうかと、頭の中で想像を膨らませていた。
 午前10時ちょうど、沢木先生が黒いスーツ姿で登場した。優しい笑顔が印象的な風貌だ。(ああ、想像したとおりの人だった。)先生の講演から感じ取ったことをここで簡単に紹介したい。

「同じ会社で一生を送るのは、つまらないじゃないか!」

 日本で就職のシーズンといえば4月。満開のさくらに囲まれた情景が目に浮かぶ。しかし、沢木先生が卒業後、内定先の会社に出勤したのは7月1日のことだった。ちょうど雨季の時期。じめじめした季節のど真ん中、沢木先生は傘をさしながら東京駅から丸の内駅まで歩く途上、こう思ったという。「40年もの間、ずっと同じ職場で同じ人たちと一緒に働くのはつまらないな…」と。
 やはりいまの仕事には向いていないと気づき、人事部に辞表を提出したものの、なかなか退職させてもらえない。「父が重病」というウソをつけば、今度は「わかった。お父さんの病気が治るまで待とう」と取り合ってくれなかったという。先生の決意を翻すには至らないと察した会社が、ようやく彼の退社を認めてくれるまで、多くの日数を要したという。

アウトプットだけでは中身がか細くなる…

 会社員の生活から脱した先生は本格的に文筆業としての活動をスタートさせた。大学時代世話になった担当教官も「もっと自由な世界に入っていけばいい」と応援してくれた。
 しかし、そこそこ名が売れるようになると、今度はまた別の焦りが生じてくるようになったという。アウトプットばかり続けていては、自身の中身が空っぽになってしまうのではないか。そんな不安を払拭するために、沢木先生は海外の旅に出ることを決意した。

「旅にふさわしい年齢がある」

 アジアを起点に欧州へと向けた旅は一年に及んだ。「もうどこでも生きていけそうな気がする」…そんな確かな手応えを得ながら帰国した先生は、自分の気持ちに大きな変化が生じていることに気づいた。「そうだ。やっぱり日本で生きてみよう。もう一回書いてみるのだ」――。その後、月日が経ち、青年時代をふと振り返った先生。お金を満足に使えなかった一人旅の思い出はかけがえのないものだと改めて実感したという。

「大学でやるべきことは、勉強だけじゃない。」

 大学で何を学ぶべきか――。それは「大事なものを見つけるため」と先生は言う。ある学生が先生に質問する。「就職についてアドバイスしてほしい」――。先生の答えはこうだ。「答えは自分でしか見つけることができない。大事なのは自分で『考えること』であり、問題を意識し続ける中で、何かが生まれる可能性がある」――。 

 今の時代では、果たして自分の心の声を聞こうとする人は何人いるだろう? お金、家…そんな物質的なものばかりに振り回され、かえって本当に大切なものを私たちは忘れかけているのではないか。沢木先生が言われる通り、確かに「答え」は人によって違うのかもしれない。しかし先生が一番伝えたかったのは、「答えを見つけた」という結果だけが大切なのではなく、「答えを探す旅」こそが我々を導いてくれる存在なのではないだろうか? そんなさまざまな事柄に想いを巡らせ、私は講演会場を後にした。(文:韓奕忱)

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